9月16日 「菅首相への手紙」、署名提出、記者会見
内閣府に「菅首相への手紙」、オンライン署名(第1弾)を提出
いのちまもる緊急行動は、9月7日までに集まった「菅首相への手紙」1565通およびオンライン署名56,686筆(うちコメント302人)を9月16日13時30分より内閣府に提出しました。菅首相との面会はかないませんでしたが、内閣府の職員2人が対応し、必ず渡しますと述べました。
全労連・小畑雅子議長、保団連・住江憲勇会長、全労連・黒澤幸一事務局長、全労連・前田博史副議長、全労連事務局1名が参加しました。
緊急行動は、「菅首相への手紙」として集まった医療従事者の切実な実態などを訴えました。内閣府側は、メモを取りながら私たちの訴えを聞いていましたが、「菅首相に対面したいとのことだが、自民党などの政党ルートは模索しているのか」と聞いてくるなど、やや誠実さに欠ける態度でした。しかし、当初内閣府は「コロナ禍なので郵送で」と面会を拒否し続けていましたので、面会して手渡しできたことは大きな一歩です。
記者会見 現場の率直な声を訴え
内閣府への提出の後、同日14時30分から厚労省記者クラブにて記者会見を行いました。「菅首相への手紙」に集まった声を紹介し、2つの要求と7つの緊急要求項目の実現を改めて訴えました。
いのちまもる緊急行動が各政党に公約に掲げるよう求めている2つの要求
1.保健所の拡充設置と、医師・看護師・介護職・保健師等の増員について、その必要性を認め、拡充・増員計画を示すこと。
2.公立・公的病院の再編統合「再検証リスト」を撤回し、感染症病床の拡充設置と、その大半を担う公立・公的病院の拡充計画を示すこと。
いのちまもる緊急行動が8月23日に発表した7つの緊急要求項目
(1)感染爆発から国民のいのちと暮らしを守るための臨時国会を速やかに開くこと。
(2)人流を抑制する強い対策をとり、そのために必要となる充分な経済的な補償を国の責任で行うこと。
(3)感染爆発の中でのパラリンピック開催は無謀であり、即時中止を決断すること。パラリンピックに派遣する予定の医療従事者等をコロナ診療・対策に従事させること。
(4)国が責任をもって緊急対応施設の設置も含め、感染者の症状に応じた施設を拡充すること。医療スタッフの効率的・集中的な配置と十分な補償を速やかに行うこと。
(5)新型コロナウイルスワクチンについて、希望者全員が接種するために必要な総量確保に全力を挙げ、不足が生じないようにすること。ワクチン接種に協力する医師、看護師等医療従事者を確保すること。接種体制を維持するため接種費用の引き上げなどを国の責任で費用補填を行うこと。
(6)無症状者も含め、感染者を把握して感染拡大を抑えるために、無料のPCR検査ステーションを各地に設置するなど、十分な検査体制をとり早期発見・保護、早期治療につなげること。
(7)コロナ患者受け入れ医療機関以外の医療機関も、通常医療を支えることで医療崩壊を防ぐ役割を果たしている。また、ワクチン接種や発熱外来、在宅医療などでも大きな役割を果たしている。コロナ患者を受け入れているか否かに関わらず、すべての医療機関への国の援助・予算措置を充分に行うこと。
全労連・小畑雅子議長
「手紙」から医療・保育・介護現場の声を紹介
人を支える大切な医療・介護・福祉などの分野で、人員・病床・保健所の削減がすすめられてきたため、どこもギリギリの体制。そんな中でも、大きな不安を抱えながら働いている仲間がいる。4つの「手紙」を紹介したい。〔コロナ軽症・中等症を受けいれる病院で働く看護師の方、救急搬送を断らざるをえなかった病院の事務の方、保護者から涙の相談を受けた保育士の方、特養老人ホームで働く介護施設職員の方の声を紹介。〕 政治には、コロナ禍で起きている事実にしっかり向き合い、いのちとくらしを守るためにあらゆる手立てをとる責任がある。国会を開いてコロナ対策の集中審議を行い、予算をつけて抜本的な対策をとってほしい。今の政策を改め、医療・介護・保健所を本気で充実させる政策に転換してほしい。

日本医労連・森田進書記長
医療従事者に高ストレス、強い虚無感
コロナ禍で入職した新入職員へのアンケートでは、「コロナへの不安」80.7%、「心身の不調」が57.9%、「辞めたいと思った」が50.2%と極めて高いストレスが示された。それさえも今年の2~3月まで「生き残った」人たちの調査であり、それ以前に疲れ果てて辞めていった人たちは含まれていない。高ストレスの背景には、人手不足で十分オリエンテーションを受けられない、同僚に不安や悩みを打ちあける時間さえないことが影響していると思う。他方で、この一年間の一時金は半分も減らされた。
9月7日の東京都の発表によれば、昨年12月から今年の8月までの間に都内において自宅療養で亡くなった方が32人いるが、そのうち8月に入ってから亡くなった方が22人。このことが医療従事者に「頑張ってきたことが報われない」、「頑張っても救えない命がこんなにある」と強い虚無感を感じさせ、現場を去っていく方が増えている。
7月からの緊急事態宣言の中、お盆の東海道新幹線乗車人数が前年比138%など、人流が増えてしまっている。自粛効果が薄れている。このような状況で、医療従事者がいくら国民の命を守ろうとしても感染が広がってしまい抑え切れない。
私たちは政治に対し、感染対策の至らなかった点をあらため、公衆衛生行政を拡充することを要望している。「菅首相への手紙」では、政治家に対しきつい言葉も書かれているが、これが現場の率直な気持ちだ。

中央社保協・是枝一成事務局次長
介護の負担増、サービス削減させない
介護保険の改悪や介護労働者の低賃金。介護従事者の賃金は全産業平均より9万円低く、人材不足が悪化している。厚労省は制度の持続可能性のためといって、介護施設での食費・居住費部分の利用者負担引き上げを強行している。これらの補足給付を受けているのは低所得者の人たちである。介護保険料を入っていても特養に入れない、入所できている人も負担増という状況だ。
2000年に介護保険制度が導入された時、政府・厚労省がかかげていた「介護の社会化」はどこに行ってしまったのか。10月からさらに新しいケアプランの検討がはじまり、個人単位だけでなく事業所単位でも訪問介護の利用制限を行おうとしている。
高齢者にとって踏んだり蹴ったりの政治をやっているのが自公政権。政府は2014年の報告書で、家族の心身の負担は非常に重くなってきており、昔とは比較にならないほど家族は介護疲れの状態にあるとしているが、今もこのままあてはまる。これ以上、負担増、サービス削減はさせない。

保団連・住江憲勇会長
病床増やせと言いながら病床削減を進める矛盾
病床使用率はステージ4で、10万人を超す自宅療養者という状態が続いている。棄民政治と言わざるをえない。
今こそ感染対策の大原則に立ち返って対応すべき。1つは徹底的な検査の拡充。2つ目は経済的補償。3つ目はワクチンの徹底。4つ目は自宅療養原則をやめること。医療機能を有した臨時の医療施設などを作り、なんとしても重症化を食い止めるべき。
今の事態は、安倍・菅政権が科学的・客観的事実を無視し、場当たり的対応に終始したことの結果。その根本には、国民に自己責任をおしつけ、大企業・富裕層には利益をもたらすという新自由主義がある。これでは到底コロナ収束に結びつくはずがない。
さらに、病床削減が平然と行われている。東京都と厚労省は、東京都の重点入院病院170病院、後方支援病院230病院に対し増床せよと迫る一方で、「地域医療構想」にもとづく病床削減も進める。現実に、コロナ禍のこの1年8ヶ月で11県において医療機関の統合・再編が実施されている。

全労連・黒澤幸一事務局長
「手紙」にあふれる、政権に緊急政策と反省を求める声
「菅首相への手紙」の内容を紹介する。〔首相に「現場に目線を落として考えていますか」と訴える看護師、パートナーをコロナで失った方や、心身共に疲弊し離職者も多いと訴える看護師の声を紹介。〕
みなさんから集まった「菅首相への手紙」を読んでみると、医療・介護・公衆衛生の現場からは、「緊迫と限界」への怒りが満ちている。一般の方には、「命軽視と無策」への徒労感が見られる。共通するのは、「緊急性と反省」を求めている点。政府はただちに自宅療養原則をやめるべきだ。
また、各政党のコロナ政策を比較してみて言えることは、第一に早期発見・早期保護・早期治療のために検査の拡充が重要という点。第二に、人流抑制にあたり経済的な後ろ盾を確保すべきという点。第三に、言葉だけでなく実行してほしいということだ。また、自公政権は病床削減を推進してきたが、野党はこれに反対してきた。これらの点で野党と自公政権との政策の違いが際立っている。
